セールスイネーブルメントは、営業担当が仕事を進められるよう、研修・商談資料・ツール・業務の進め方を整える取り組みです。Salesforceの学習資料でも、営業に必要な研修、コンテンツ、ツール、プロセスを提供する考え方として説明されています。出典:Salesforce Trailhead
仕事を理解する際は、「何を教えるか」に加えて、「商談で何ができるようになるか」を考えると具体化できます。IT営業の経験を育成や商談支援に生かしたい人に向けて、仕事内容と必要な能力、応募前の確認事項を整理します。
育成・商談支援では何をするのか
以下は、仕事内容を理解するための整理例です。すべての企業が同じ分担を採用しているという意味ではありません。求人に「営業支援」とあったとき、どの課題に関わり、何を作り、その後まで確認する仕事なのかを照らし合わせてください。
| 営業現場のつまずき | 支援の仕事の例 | 作るものの例 | 実践を確かめる観点 |
|---|---|---|---|
| 入社後に何から学ぶか分からない | 学ぶ順序と到達目標を設計する | 学習計画、練習課題 | 顧客課題と提案の関係を説明できるか |
| 機能説明だけで商談が終わる | ヒアリングの練習を設計する | 質問例、ロールプレイの評価表 | 顧客の現状と判断条件を聞けるか |
| 必要な提案資料を選べない | 資料の用途と使う条件を整理する | 商談段階別の資料案内 | 顧客の状況に合う資料を選べるか |
| 同じ質問への回答がばらつく | 確認済みの回答と相談先を整える | FAQ、技術担当への確認票 | 未確認の内容を確約せず相談できるか |
| 研修後に実践できているか分からない | 商談の振り返りと教材の修正をつなぐ | 観察記録、次の練習課題 | 練習した行動を商談で使えているか |
この表を使うなら、「資料を作る」「研修を開催する」だけで担当範囲を決めず、現場への聞き取りと実践後の見直しを誰が受け持つかも確認しましょう。
営業研修やプリセールスとの違いをどう考えるか
営業研修は、知識や行動を学ぶ機会として位置づけられます。一方、セールスイネーブルメントの仕事を検討する際は、研修に加えて、必要な資料を使える状態にすることや、学んだ行動を現場で確かめることまでを視野に入れると整理しやすくなります。
プリセールスとの境界は、「個別商談の技術判断を支援する仕事」と「複数の営業担当が提案できるよう育成・資料を整える仕事」を分けて考えてみてください。たとえば、顧客環境での技術検証と、その検証から得た注意点を営業向け教材にする作業では、必要な成果物が異なります。技術面の提案支援については、プリセールスの仕事内容も参考になります。
また、どの営業部門を支援するかも確認が必要です。GitLabの公開資料では、Field Enablementの領域として営業、カスタマーサクセス、パートナーへの支援や入社後の立ち上がり支援などが挙げられています。これは一社の例であり、その範囲がすべての企業に当てはまるわけではありません。出典:GitLab Handbook
支援対象の仕事を整理したい場合は、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの違いと併せて読むと、担当する商談段階を比較できます。
IT営業の商談支援を設計する例
ここからは、クラウド移行の提案で「初回商談後も、検討に必要な情報がそろわない」という架空の課題を使った設計例です。実際の顧客事例や当社の取り組みではありません。
まず、営業担当と商談を振り返り、何が不明なのかを具体化します。移行の目的なのか、対象システムなのか、止められない時間帯なのかによって、準備する支援は変わります。「知識が足りない」と一括りにせず、質問できなかったのか、聞いた内容を記録できなかったのかも分けて考えます。
次に、不足した情報を聞くための質問例と、技術担当へ渡す確認票を作ります。専門用語の一覧だけで終わらせず、「何を判断するための質問か」「その場で回答できない場合は誰に確認するか」を添える方法が考えられます。
練習では、説明の上手さだけを評価せず、移行目的を聞けたか、未確認事項を残せたか、次回までの確認担当を決められたかを見ます。その後の商談で使いにくかった項目を集め、質問例や教材を直します。
課題の把握、教材の作成、練習、実践の確認を一続きに設計することが、この例のポイントです。
必要な能力は成果物から整理する
以下の四つは、前述の仕事を担うために本記事が提案する能力の整理です。特定企業の採用要件や、共通資格の要件ではありません。
現場のつまずきを言葉にする力
「提案力を高めたい」という相談を、どの場面で何ができていないかまで具体化します。営業経験があるなら、自分が売れた方法だけでなく、後輩が迷った点と、どう説明し直したかを振り返ると接点を探せます。
学習と実践を設計する力
教材の目次を作る前に、学習後にできる行動を決めます。たとえば「商品を理解する」から「顧客課題に合う機能を選び、選んだ理由を説明する」へ具体化し、その行動を試す課題を用意する考え方です。
技術担当や営業責任者と調整する力
IT商材の説明資料を作る場面では、営業向けに分かりやすくすることと、技術上の条件を正確に残すことを両立させたいところです。内容を確認する担当者、変更時の更新担当、現場からの質問の戻し先まで相談しておく方法があります。
実践を観察し、改善点を選ぶ力
Salesforceの学習資料は、成果につながる目標指標を定め、その目標に向けて研修を作ることを勧めています。出典:Salesforce Trailhead
評価を設計するなら、受講の完了、商談での行動、商談の結果を分けて見る方法があります。先ほどの仮例なら、「受講したか」「必要事項を確認できたか」「次の検討段階へ進んだか」を順に確認します。
受注の増減を研修だけの効果と判断する前に、案件の条件や商材、担当顧客の変化も確認しましょう。目標を置くことと、その変化が施策によるものだと証明することは分けて扱います。
応募前に担当範囲と経験の接点を確認する
求人や面談では、職種名に加えて次の点を確認することを勧めます。
- 支援対象は新人営業、既存営業、管理職のどこか。
- 教材制作、研修実施、商談同席、実践後の改善のどこまで担うか。
- 技術内容の確認や、営業活動の評価は誰と分担するか。
- 評価する成果と、それを確認できる情報は何か。
自分の経験は、「誰が何に困っていたか」「どんな支援を作ったか」「実践をどう確かめたか」で整理してみてください。後輩向けの説明資料を作った経験でも、資料作成まで担当したのか、使われ方の確認まで行ったのかを分けて伝えられます。確認していない成果を、売上への貢献として補う必要はありません。
テクノヴァースの営業職に関心がある方は、営業職の紹介で職務理解を深めてください。本記事で紹介した一般的な支援業務が、そのまま当社の専任職種や採用要件を示すものではありません。