クラウド移行サービスの選び方|委託範囲と自社の担当をそろえる

クラウド移行サービスを比べるときは、「移行一式」という名称より、調査、構築、データ移行、切替、運用開始のどこまでを依頼できるかを確認します。同じ対象サーバーでも、含む作業と自社側の準備が違えば、見積もりの前提はそろいません。

この記事は、事業者のランキングではなく、支援内容を比較するための範囲整理です。個別サービスの価格や提供内容は扱わず、相談時に渡す材料と質問を具体化します。

移行前・切替・移行後に分けて読む

AWSの移行ガイドは、評価、準備、移行の段階を分け、準備段階でセキュリティや運用、人材なども扱っています。データを動かす作業だけに範囲を限定しない考え方として参考になります。AWS「移行の概要」

ただし、これはAWSの方法論であり、どの支援会社も同じ作業を契約に含むという意味ではありません。以下の表を、見積書や提案書を読む際の質問案として使ってください。

時点 委託候補の作業 受け取りたい成果物の例 自社で用意・判断するもの
移行前 現状調査、依存関係の確認 対象一覧、未確認事項、移行方式案 資料、担当窓口、業務上の制約
環境準備 基盤構築、権限・接続の設定 設定記録、構成、確認結果 利用者、接続先、権限の方針
リハーサル データ移行、動作確認 実施結果、未解消事項、所要時間の記録 業務データの照合と利用確認
本番切替 移行操作、切替、監視 作業記録、切替後の確認結果 実施・中止の判断者、利用部門への連絡
移行後 初期問い合わせ、引き継ぎ 運用資料、残課題、支援終了条件 日常運用の担当、問い合わせ先

不明な欄は「含まれない」と即断せず、確認事項にします。必要な作業が見積対象外なら、自社か別の担当が実施できるかも含めて比較します。

「対象」を台数だけで決めない

移行対象には、サーバーのほか、データ、アプリケーション、連携、利用者設定などが関わります。相談前には、対象名と一緒に「移行後に何が使えればよいか」を書きます。

例えば、社内のファイル共有を移す場合、ファイルのコピーだけでなく、権限、既存のリンク、端末からのアクセス、バックアップの扱いを質問候補にします。すべてを今回の委託へ含める必要はありませんが、対象外のまま利用開始に支障がないかを確認してください。

依存先が分からない段階なら、全体移行を確定する前に調査範囲を決めます。棚卸しの入口は、対象システムと依存関係の確認項目を参照してください。

仮例:二つの提案の前提を合わせる

以下は架空の比較です。実在サービスの見積もりやテクノヴァースの提供条件ではありません。

提案Aは基盤構築と一回のデータ移行を含み、アプリの修正と利用者確認は対象外です。提案Bは移行リハーサルと利用者確認の支援を含みますが、既存環境の調査資料は自社から提供する前提です。

この場合、「Bの方が広い」とだけ判定しても、資料がない自社で着手できるかは分かりません。次のように論点を分けます。

確認する論点 比較前にそろえること
現状資料が不足 追加調査を依頼できるか、何がそろえば着手できるか
本番前に試したい リハーサルの対象、回数、再実施の条件
アプリが動かない 切り分け、修正、別担当への連絡のどこまで含むか
利用者の確認が必要 誰がシナリオとデータを用意し、誰が結果を判断するか

必要な作業を同じ条件へそろえた後で、費用と期間を比べます。不足分を自社が担う案も選択肢ですが、担当者の時間と権限を確保できることが前提です。

切替当日の操作と、業務判断を分ける

事業者が操作を行う場合も、いつ止めてよいか、どの不具合なら利用を開始できるかは、業務側の条件と合わせて決める必要があります。比較時には「立会いあり」の一文から、次の点を具体化することを勧めます。

  • 対応する時間帯と、予定を超えた場合の連絡方法
  • 中止・切り戻しを提案する担当と、判断する担当
  • 切り戻し作業と再実施の見積範囲
  • 業務上の正常確認に使う手順と、確認者の待機

詳細な実施順序は、切替・切り戻しの実施計画で扱っています。本記事の比較表を、そのまま当日の作業手順には使わないでください。

支援が終わる条件まで確認する

移行後に不明点が出たとき、初期支援に含まれるか、通常運用の別契約か、追加相談かを確認します。期限だけでなく、残課題の扱い、構成・設定の引き渡し、アクセス権の整理も質問に含めましょう。

クラウド基盤側と利用者側の分担は、責任共有モデルの話です。それに加えて、今回の委託先と自社の作業範囲を決めます。委託範囲表は契約上の責任を自動的に確定するものではありません。

相談前には、対象一覧、停止できない時間、手元にある資料、社内で担当できる作業をまとめてください。基盤の構成や移行については、テクノヴァースのインフラ支援をご覧ください。

記事一覧へ戻る

ITの困りごとを、
まずはご相談ください。

何から手をつけるか決まっていない段階でも構いません。ご相談内容に応じて、担当者からご連絡します。

まずは相談する

採用へのご応募は採用エントリーからお願いします。