クラウド移行の計画では、対象となるシステムと現在の構成、システム間の依存関係を把握したうえで、移行の順序や方法を具体化します。AWSのガイドでは、アプリケーション群と関連インフラの評価で得られる情報が、移行に関わるほかの作業の重要な入力になると説明されています。
この記事では、企業のIT・調達・プロジェクト担当者が相談前に確認できるよう、対象システム、構成要素、依存関係、運用上の制約を一覧にする観点を紹介します。特定のクラウド製品や移行方式を推奨するものではありません。
クラウド移行前の棚卸しで確認する範囲
AWSのアプリケーションポートフォリオ評価ガイドでは、アプリケーションと関連インフラの評価に、情報収集、分析、計画が含まれます。関連インフラとして挙げられているのは、コンピューティング環境、ストレージ、ネットワークです。
棚卸しでは、これらの構成要素だけでなく、対象となる業務、担当者、依存関係も同じ一覧から確認できるようにします。
対象システムを業務単位で整理する
Microsoftのクラウド導入計画テンプレートは、移行対象をワークロード単位で一覧化し、業務面と技術面の情報を記録する構成です。ここでいうワークロードは、特定の業務目的を支えるシステムと、その構成要素をまとめた単位です。サーバーだけで区切らず、この業務単位を起点にすると、アプリケーションやデータベースなどの関連要素を同じ対象として確認できます。
各対象システムについて、同テンプレートが示す次の情報を記録します。
- 組織内で使用している正式名称
- 支えている業務と利用部門
- 業務上の責任者と技術面の担当者
- 停止した場合に影響を受ける業務
- 重要度
システムを構成する要素を一覧にする
Microsoftのテンプレートでは、現行構成として、コンピューティング環境、ストレージ、ネットワーク、データベース、アプリケーション層を記録します。初回の一覧でも、この構成要素と現在の配置先を確認対象にします。
- アプリケーションと、その実行基盤
- コンピューティング環境
- データベースとストレージ
- ネットワーク
- 本番、テスト、開発などの環境
同じテンプレートでは、稼働している環境と、内部・外部の依存関係も記録対象です。構成要素、環境、依存関係を対応付けることで、対象システムの現在の範囲を確認できます。
依存関係を接続先とともに整理する
Microsoftの移行計画ガイドでは、移行グループを作る前に、内部・外部の依存関係を把握する手順が示されています。
依存関係の整理対象として示されているのは、共有データベース、API、認証サービス、ネットワーク接続などです。一覧では、どの構成要素が何に依存しているかを対応付けます。
同ガイドは、依存関係ごとのグループについて、構成要素の一覧、重要な依存関係、業務・技術・時期に関する移行上の制約を記録するよう示しています。
運用上の制約を記録する
Microsoftのクラウド導入計画テンプレートでは、対象システムの業務情報として、メンテナンス可能時間帯と、業務上の理由で変更できない期間を記録します。移行計画ガイドでも、停止可能時間や重要な業務期間を移行日程へ反映する考え方が示されています。
- 通常の利用時間
- メンテナンス可能時間帯
- 業務上の理由で変更を避ける期間
- 確認を担当する部門または責任者
不足している情報を確認事項として残す
AWSのガイドでは、アプリケーション群の情報を段階的に充実させ、情報の不足を解消しながら、優先するアプリケーションの評価と移行計画を進めます。一覧で確認できなかった項目は未確認として区別し、優先対象を詳しく調べる際の確認事項として残します。
相談前に確認する一覧
- 対象システムの目的、責任者、重要度を確認できる
- アプリケーション、コンピューティング環境、データベース、ストレージ、ネットワークを一覧で確認できる
- 内部・外部の依存関係が構成要素と対応付いている
- 利用時間、メンテナンス可能時間帯、変更を避ける期間を確認できる
- 未確認項目が明示されている
参考資料
整理した情報を次の検討へつなげる
対象システムの業務情報、現行構成、依存関係、運用上の制約は、移行の優先順位や順序を検討するための入力になります。クラウド移行を含むインフラの検討については、インフラ・クラウド技術支援のページをご確認ください。