ITアウトソーシングとは?内製と委託の業務範囲・責任の決め方

ITアウトソーシングを検討するときは、外部に任せる作業と、社内で決める事項を一組で整理することから始めましょう。「運用を任せたい」という依頼を、監視、問い合わせ対応、変更作業、障害対応などに分けると、見積もりや役割分担を具体化できます。

この記事では、社内ITの導入・運用担当者に向けて、内製と委託を判断する表と、依頼前に決めたい項目を紹介します。表や手順は編集上の提案です。各社に共通する契約条件や、特定サービスの対応範囲を示すものではありません。

ITアウトソーシングとは

ITアウトソーシングは、ITに関わる業務を外部に委託することです。ドコモビジネスもこの意味で説明しています。この記事では、社内システムやインフラの導入・運用に関する委託を扱います。出典:ドコモビジネス「ITアウトソーシングとは?」

検討の目的は、「夜間の一次対応を確保したい」「担当者が企画や改善に使う時間を確保したい」など、解決したい業務課題として書いてみてください。委託したい業務と、その結果どの社内業務を優先するかを合わせておくと、導入後に評価する観点も決めやすくなります。

内製・委託・分担を判断する表

最初から部署全体を委託するかどうかを決めず、一つの作業について「手順を渡せるか」「結果を確認できるか」「事業上の判断が必要か」を確認します。次の表は、そのための判断例です。

作業の状態 検討する進め方 依頼前に準備するもの
手順と完了条件が決まっている 作業の実行を委託する候補にする 手順書、対象一覧、完了報告の形式
専門的な調査が必要で、社内に知識が足りない 外部に調査・改善案の作成を相談する 現状構成、制約、判断したい論点
業務の優先順位や予算を決める 社内の決裁者を定め、外部には判断材料を求める 事業への影響、予算枠、承認経路
例外が多く、担当者しか手順を知らない 作業の棚卸しと手順化から始める 対応履歴、例外一覧、担当者への確認事項
対応時間帯だけが不足している 時間帯や一次対応の範囲を区切る 受付時間、連絡先、引き継ぎ方法

例えば「アカウント管理」を任せる場合、作成・停止の操作と、誰にどの権限を与えるかの承認を分けて考えます。委託先に操作を依頼する案でも、申請を承認する社内担当者と、申請内容に不備があった場合の戻し先を決めておきましょう。

期待する利点は、委託候補ごとに書きます。一方で、引き継ぎ、承認、報告確認に必要な社内作業も見積もります。「作業を移せば社内工数がゼロになる」という前提ではなく、移す作業と残る作業を並べて比較してください。

責任分担は「実行・承認・例外対応」まで決める

IPAは、委託先などを含めたセキュリティ対策状況の把握と、契約における役割・責任範囲の明確化を示しています。これはセキュリティ管理についての指針です。出典:IPA「指示9」

この考え方を踏まえ、運用の分担を検討するときも、誰が作業し、誰が承認し、判断できないとき誰へ連絡するかを一行ずつ書くことを提案します。以下は分担のたたき台です。

業務 委託先へ依頼する作業の例 社内で決める事項の例 事前に合意したい境界
問い合わせ対応 受付、既知の手順での案内、記録 対応の優先順位、業務ルールの例外 対象者・端末、未解決時の引き継ぎ先
アカウント管理 承認済み申請に基づく作成・停止 権限の承認、対象者の確認 緊急停止を実行できる条件
監視・障害対応 検知、通知、合意済みの一次対応 業務停止の許容範囲、復旧の優先順位 再起動・切り戻しの権限と承認方法
バックアップ 実行結果の確認、異常報告、復元作業 対象データ、復元時点、復元後の業務確認 復元テストの対象と担当
構成変更 変更案・手順の作成、承認後の作業 変更の可否、停止時間、費用 緊急変更と通常変更の承認経路

「障害対応に含む」の一言で終えず、操作できる範囲と連絡条件まで書きます。再起動を例にするなら、対象機器、実行条件、実行前の記録、実行後の確認項目をそろえましょう。社内担当者と連絡がつかないときの代替連絡先も、分担表と一緒に用意します。

複数の事業者が関わる場合は、問い合わせの受付先、切り分けを始める担当、別事業者へ引き継ぐ条件を追加してください。「別の会社の担当」と分かった後に、誰が次の連絡をするかまで決めるためです。

見積もり依頼には対象範囲・品質・費用をそろえる

対象と対象外を同じ資料に書く

依頼資料には、システムや機器の一覧に加え、利用者、拠点、対応時間、必要な権限を記載します。「ネットワーク運用」のような業務名だけでなく、監視、設定変更、現地作業、機器交換のうち、どの作業を見積もるかを明示しましょう。

対象外の作業についても、別途見積もりを依頼できるのか、社内や別事業者が担当するのかを書きます。依頼件数や作業量が分かる履歴は見積もりの前提として渡し、不明な値は推測で埋めず、調査が必要な項目として残してください。

SLAは何を測るかまで確認する

SLAは、サービスの提供者と利用者がサービスの範囲や品質、達成目標などについて交わす合意を指します。会計検査院の説明でも、この意味で用いられています。出典:会計検査院「政府情報システムに関する会計検査の結果について」注40

依頼内容を詰める際は、「受付」「最初の応答」「調査開始」「復旧」を分けて相談することを提案します。例えば「応答時間」を決めるなら、どの窓口への連絡を起点にし、何をもって応答とするか、時間外はどう扱うかまで書きます。

加えて、達成状況の報告方法、対象外とする条件、未達時に行う対応を確認します。数値は一律の推奨値を置かず、自社業務が待てる時間と、委託先が対応できる条件を照合して決めましょう。

月額以外の費用と社内工数も比較する

見積もり比較では、月額、初期調査・移管、時間外作業、現地対応、追加変更、終了時の引き継ぎを分け、料金に含まれるか確認してください。これは料金相場ではなく、比較条件をそろえるための項目例です。

内製を続ける案にも、作業、引き継ぎ、教育に使う時間を記入します。委託する案には、社内の承認と報告確認の時間を残します。同じ範囲・時間帯で比較してから、費用と必要な体制を判断しましょう。

開始時と終了時の引き継ぎを先に設計する

運用開始前は、構成情報、台帳、手順書、未解決の課題、連絡先をそろえます。委託先に付与する権限と、作業記録を確認する方法も決めておきましょう。

移管の確認には、通常の依頼一件と、承認者が不在のケースなどを使って、受付から報告までを机上で追う方法を提案します。担当が空欄になる箇所を見つけたら、開始前に分担を補います。

終了時に受け取りたいものも、開始前の確認事項です。更新済みの構成図・手順書、作業履歴、未解決事項、データの受け渡し方法を列挙し、権限の解除や委託先に残るデータの扱いも相談してください。対応範囲、形式、費用は依頼先と合意します。

まずは委託候補を一つ選び、この記事の分担表に自社の担当者名と実際の対象を記入してみてください。その資料を使い、委託先に任せられる範囲と社内で補う事項を相談します。インフラ支援を検討する際のサービス案内は、テクノヴァースのインフラ支援ページをご覧ください。

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