IT資産管理とは、業務で使う機器やソフトウェアなどを把握し、取得から利用、更新、廃棄まで管理する取り組みです。PCの台数を数えるだけでなく、何のために持ち、誰が使い、いつ判断が必要になるかを分かる状態にします。
管理を始めるときは、「何を一覧にするか」より先に、「その情報で何を決めたいか」を整理しましょう。この記事では、企業の管理責任者に向けて、IT資産管理の対象、目的、担当の決め方を説明します。
IT資産管理は、機器・利用・契約をつないで考える
IT資産管理はITAM(IT Asset Management)とも呼ばれます。IBMは、財務、契約、インベントリーの情報を使い、資産をライフサイクル全体で管理するものと説明しています。インベントリーとは、ここでは資産の種類や所在、状態を把握するための一覧情報です。IBMのIT資産管理の解説
たとえば、PCが一台あると分かっていても、使う人が決まっているのか、予備なのか、修理中なのかによって次の行動は変わります。追加購入を判断したいなら利用状態、返却を確認したいなら貸与先、更新を判断したいならサポート条件が必要です。
一つの目的のために集めた情報だけで、すべての判断をしようとしないことが大切です。購入記録と端末の収集情報が別の仕組みにあっても、同じ対象を識別して参照できるようにします。必ず一つの巨大な表へ集約する、という意味ではありません。
管理対象は、目的と組み合わせて決める
PC、サーバー、ネットワーク機器に加え、ソフトウェアやSaaSなども検討対象になります。最初から項目を増やすのではなく、困っている判断ごとに必要な対象を選ぶと、管理の範囲を説明しやすくなります。
以下は、管理範囲を決めるための整理例です。すべての組織へ同じ範囲を求める基準ではありません。
| 管理で答えたい問い | 主な対象 | 結び付けたい情報 |
|---|---|---|
| 誰が何を使っているか | 貸与PC、スマートフォン | 利用者、保管先、利用状態 |
| 保護すべき機器はどこにあるか | 端末、サーバー、ネットワーク機器 | 管理担当、接続先、確認時点 |
| 更新や継続利用をいつ判断するか | 機器、ソフトウェア、利用契約 | サポート条件、契約期限、判断者 |
| 追加調達の前に再利用できるか | 予備機、返却済み機器 | 使用可能な状態か、必要業務との適合 |
| 利用実態と契約を照合できるか | ソフトウェア、SaaS | 利用対象、契約内容、契約の管理先 |
セキュリティの観点では、CIS Control 1が、物理・仮想・リモート・クラウド環境の資産を把握し、未承認または未管理の資産を見つけて対処することを示しています。社内の机に置かれたPCだけを見る範囲では、目的に足りない場合があります。CIS Control 1
所有しているかどうかと、自社で確認が必要かどうかも分けましょう。リース端末や委託先が持ち込む機器などは、契約や接続の条件を確認したうえで、誰が何を把握するかを決めます。管理対象に含めることと、自社に変更権限があることは同じではありません。
会計・セキュリティ・構成管理との役割を整理する
社内に既存の一覧があるなら、作り直す前に、その一覧が答えられる問いを確認します。ここで整理したいのは部門の優劣ではなく、情報を渡し合う場所です。
会計用の一覧がある場合は、取得情報と実際の利用者・所在をつなげられるかを確かめます。機器の稼働状況を調べる仕組みがある場合も、保管中の予備機や契約の情報まで含まれているかを別に確認します。「一覧が存在する」だけで目的を満たしたと判断しないようにします。
構成管理では、対象同士の関係も扱います。たとえば、あるサーバーの停止がどの業務へ影響するかという問いです。保有・利用の管理と関係を共有しつつ、すべての依存関係を最初のIT資産一覧へ詰め込む必要はありません。
更新期限が課題ならサポート終了に備える整理方法、移行対象の関係を調べるならクラウド移行前のシステム棚卸しへ、目的に応じて進めてください。
管理責任者と、情報を変える担当を分ける
責任者の名前を置くだけでは、日々の情報は更新されません。対象範囲を決める人、変化を連絡する人、情報を更新する人、差異を解消する人を具体化します。
たとえば、貸与PCから始める場合、管理責任者が「貸与中・予備・修理中の会社管理PC」を対象と決め、部門担当が利用者の変更を連絡し、管理担当が一覧へ反映する形が考えられます。現物と記録が合わないときの確認先まで決めれば、一覧作成後の作業が見えます。これは体制を考えるための仮例です。
外部へ運用を依頼する場合も、自社が決める利用・廃棄の判断と、依頼先が実施する収集・更新作業を区別します。依頼先が取得できない情報を誰が補うか、契約対象外の機器を誰が確認するかを残してください。
最初の範囲は小さくしても、対象外を曖昧にしない
開始時は、目的、対象、担当、見直す時点を一枚にまとめます。以下は、範囲を限定して運用を始める例です。
目的:貸与中と返却済みのPCを区別し、次の貸与に使える機器を確認する。対象:本社が管理するPC。今回はスマートフォンと各部署の独自購入品を含めず、次回の範囲見直しで扱う。管理責任者:情報システム責任者。確認:貸与・返却の記録と現物の対応を担当者が確かめる。
対象外を残すのは、それらが安全または不要だと判断したことにはなりません。先に扱うべきリスクがあるなら、開始範囲を見直します。
また、一覧が埋まったことだけで効果を判定しないようにします。「追加調達の前に予備機の有無を確認できたか」「返却状況が不明な対象を誰が調べるか決まったか」など、最初の問いへ答えられるかを確かめます。
まずは現在答えられない問いを一つ選び、その問いに必要な対象と担当をそろえましょう。管理範囲や運用体制の整理から相談したい場合は、インフラ・クラウド技術支援をご確認ください。