生成AIへのプロンプトは、作業の目的、使う材料、返してほしい形を伝える依頼文です。「分かりやすくまとめて」だけでは、誰向けか、残すべき条件は何か、情報が足りない場合にどうするかが伝わりません。
最初は目的・入力資料・作業・出力形式・不足時の扱いを分けて書いてみてください。本記事では、架空の施設案内を要約する例で、曖昧な指示を具体化します。実サービスでの測定結果や、必ず同じ回答を得られるテンプレートではありません。
まず「何に使う回答か」を決める
目的を決めると、詳しさや言葉遣いを選べます。新入社員が初めて読む案内と、管理担当者が更新箇所を確認するメモでは、同じ資料でも必要な出力が異なります。
Googleの公式ガイドは、明確な指示、制約、出力形式、例示を使う方法を紹介しています。同時に、提示する方法は出発点であり、実際の回答を見て調整すると説明しています。Google「Prompt design strategies」
依頼文を作る前に、次の欄を短い言葉で埋めます。
| 項目 | 書く内容 | 今回の例 |
|---|---|---|
| 目的・読者 | 誰が何をするために読むか | 初めて共用室を使う社員が利用条件を知る |
| 入力資料 | 使用してよい情報の範囲 | 下に示す架空の案内だけ |
| 作業 | 何を生成・整理するか | 利用前に読む短い要約 |
| 出力形式 | 欄や順序、長さの希望 | 対象、予約、利用時の注意、不明点 |
| 不足時の扱い | 書かれていない事項への対応 | 推測で補わず「記載なし」とする |
「最高の専門家として」のような役割指定だけで、資料不足が解消するわけではありません。読者と作業を具体化する方を先に進めましょう。
仮例:施設案内を短くする依頼
以下は説明のために作った資料です。テクノヴァースや実在の施設のルールではありません。
共用室は社員が利用できます。利用前に予約表へ氏名と時間を登録してください。来客の同伴には管理担当への事前連絡が必要です。利用後は机を元の配置へ戻してください。
これに「共用室の使い方を短くまとめて」とだけ依頼すると、残したい条件が伝わりません。次のように、材料と指示を分けて書きます。
目的:初めて共用室を使う社員向けに、利用前の案内を作る。
作業:下の資料だけをもとに要約する。
出力:対象者/予約方法/来客同伴の条件/利用後の作業/記載のない事項。
条件:来客同伴の事前連絡を省かない。資料にない時間・料金・承認方法を作らない。
不明点:「記載なし」と示す。外部の施設ルールで埋めない。
資料ここから
共用室は社員が利用できます。利用前に予約表へ氏名と時間を登録してください。
来客の同伴には管理担当への事前連絡が必要です。
利用後は机を元の配置へ戻してください。
資料ここまで
ここで期待するのは、華やかな文章ではなく、必要な条件が落ちず、資料にない事項が増えないことです。「予約には管理者の承認が必要」と出たら、元資料にその記述があるかを確かめます。事前連絡と承認は同じ意味ではありません。
長い指示より、矛盾しない指示にする
「すべて詳しく」「短く一文で」「表にして」を同時に求めると、優先順位が曖昧になります。まず必ず残す条件を決め、その条件を保ったうえで短くするよう依頼してください。
表現の形式をそろえたい場合は、期待する一行の例を添える方法もあります。ただし、例の中に架空の料金や期限を書くと、実際の資料にある値と混同しやすくなります。書式だけを伝えるなら、「項目名:資料に書かれた内容」のように値を持たない例にします。
複数の作業があるなら、資料から事実を抜き出す段階と、読みやすい文章へ整える段階を分けることも検討します。一つにまとめるかは、途中の抜けを確認する必要があるかで判断します。
うまくいかないときは、不足の種類を見分ける
次は依頼を直すための見方です。モデルの性能を保証する診断表ではありません。
| 回答の問題 | プロンプトで見直す点 | 指示だけでは解消しないこと |
|---|---|---|
| 必要な条件が抜ける | 必須項目として指定する | 元資料自体に条件がない |
| 長さや書式が違う | 欄名、順序、長さの優先順位を明示 | 使用機能が指定形式を保証しない |
| 資料外の内容を加える | 使用範囲と不足時の返答を明示 | 誤りが完全になくなる保証 |
| 読者に難しすぎる | 前提知識と利用場面を具体化 | 専門的な内容の正誤判断 |
NISTは、生成AIが事実と異なる内容や根拠らしい説明を作るリスクを整理しています。「正確に」と指示したこと自体を検証の代わりにしないでください。NIST「Generative AI Profile」2.2
入力してよい資料で試し、原文と照らす
実務で使う際は、社内で許可されたサービスと入力情報を使います。機密資料を例文の欄へそのまま貼り付ける前に、生成AIの社内利用ルールで扱う入力範囲と確認担当を確認してください。
最初の一回は、短く正誤を確かめられる資料で試します。出力の各項目が原文のどこに対応するか、条件が欠けていないか、資料外の追加がないかを見れば、次に直す指示を絞れます。
チームで継続利用する指示文ができたら、保存と更新の扱いはプロンプトの版管理へ進みましょう。業務への適用範囲についての相談は、お問い合わせからお寄せください。