生成AIの回答を評価するときは、気になった質問をその場で入力するだけでなく、同じ条件で比較できる評価ケースを用意しましょう。自然に読める回答でも、必要な条件が抜けたり、根拠のない内容が加わったりする場合があります。
この記事では、社内FAQや文書作成支援などの業務AIを評価する担当者向けに、入力、期待する動作、根拠、判定の観点をそろえる方法を紹介します。実施済みの評価結果や、特定モデルの優劣を示すものではありません。
「良い回答」を、業務上の条件へ分解する
Microsoft Foundryの資料では、生成AIの評価に品質、安全性、信頼性などの観点を設け、公開前に評価データセットや例外ケースを使う考え方が説明されています。Microsoftの生成AI評価の説明
評価項目を選ぶ際は、業務で何に使う回答なのかを先に決めます。案内文の下書きと、社内規程を根拠にしたFAQでは、確認したい条件が異なります。共通の総合点だけで済ませず、その用途で見逃せない誤りを言葉にします。
たとえばFAQなら、根拠資料と矛盾しないこと、対象者や適用条件を落とさないこと、資料にない内容を断定しないことが評価候補になります。文体の読みやすさとは別の欄で判定しましょう。
評価ケースに必要な材料をそろえる
次は評価ケースの記録案です。製品の必須形式ではなく、担当者同士が同じ条件を確認するための項目です。
| 項目 | 残す内容 |
|---|---|
| ケースID・用途 | どの業務の何を確かめるか |
| 入力 | 質問、与える情報、前提 |
| 参照資料 | 根拠の場所、版、適用日 |
| 期待する動作 | 答える、確認を求める、回答を控える |
| 必須の内容 | 含める条件、根拠、注意点 |
| 不合格となる内容 | 誤った断定、条件漏れ、根拠のない追加 |
| 判定記録 | 結果、理由、確認した担当 |
期待する回答を一文だけで固定すると、意味が正しい別表現を不合格にしたり、文章が似ているだけで合格にしたりするおそれがあります。必要な意味と、許容できる表現の幅を分けておきます。
仮例:社内FAQのケースを三つに分ける
架空の社内手続きFAQを想定します。以下は評価設計の例で、実在する会社の規程や実測結果ではありません。
| ケース | 入力の特徴 | 期待する動作 |
|---|---|---|
| 通常の質問 | 対象者と手続きが明確 | 該当する資料に基づき案内する |
| 条件が不足 | 対象者や利用場面が不明 | 必要な確認を求める |
| 根拠がない | 資料にない例外の承認を求める | 断定せず担当窓口へつなぐ |
通常ケースだけを増やすより、判断の違うケースを含める方が、利用範囲の確認に使えます。短い質問、言い換え、複数の条件が混ざった質問なども、実際の用途に合わせて選びます。
入力資料に秘密情報を含める必要はありません。利用許可のある資料や、条件を保った架空データを使い、実情報を使う場合は組織の取り扱いルールに従ってください。
合計点の前に、失敗の種類を見る
評価では、根拠違い、条件漏れ、質問の取り違え、不要な断定など、修正方針が異なる失敗を分けます。回答を控えるべきケースで断定したなら、文体の評価が高くても別の問題として扱います。
判定担当の間で意見が分かれる場合は、正解文を増やす前に、業務上の期待がそろっているかを確かめます。資料自体が曖昧なら、そのケースをAIの性能差だけで説明しないでください。
自動評価を使う場合も、何を判定でき、何が判定外なのかを確認します。重要な失敗例は人が根拠を見て確かめ、評価値だけで利用可否を決めないようにします。
比較するときは、入力と版を固定する
モデル、指示文、参照資料を変えたら、何を変えた比較なのかを記録します。評価ケースまで同時に変えると、回答が変わった理由を追いにくくなります。
新しく見つかった失敗例は、既存の比較用ケースとは区別して追加し、評価データの版を更新します。一度の回答だけで安定性を断定せず、必要に応じて同じ条件でのばらつきも確認してください。
まずは一つの業務について、通常、不足情報、対象外のケースを用意し、担当者が同じ理由で判定できるかを確認しましょう。生成結果を共有前に確認する流れは、AI議事録の確認方法も参考になります。