OJTは、実際の仕事を通じて、指導を受けながら必要な技能や判断を学ぶ方法です。一方、Off-JTは通常の業務から切り離して行う研修や演習を指します。社内で学ぶか社外で学ぶかだけで、二つを分けるわけではありません。
エンジニアの育成では、知識を学ぶ時間、失敗を含めて練習する時間、実務で判断する時間を分けると、どちらを使うべきか考えやすくなります。この記事では方式の違いと組み合わせ方を整理します。
OJTとOff-JTの違いは、通常業務との関係
厚生労働省の資料は、OJTを事業活動の中で指導下に行う実習、Off-JTを通常業務と区別して行う座学・実技として説明しています。引用元は過去の助成制度の資料ですが、ここでは用語の区別のみを参照し、助成金の現行条件は扱いません。厚生労働省の説明(PDF 2ページ)
例えば、社内の研修室でテスト用データを使ってSQLを練習する時間は、通常業務から切り離した演習として整理できます。同じSQLでも、担当する実案件の集計を指導者と一緒に確認する場面は、実務を通じた学習です。場所や使用するソフトウェアより、何のために行う作業かを見ます。
| 観点 | OJT | Off-JT |
|---|---|---|
| 学ぶ場面 | 実際の業務を進める中 | 業務と分けた研修・演習 |
| 扱う材料の例 | 担当案件の仕様、作業記録 | 教材、架空データ、演習課題 |
| 確かめたいこと | その場の条件で知識を使えるか | 基礎を説明し、練習課題を解けるか |
| 育成側が準備すること | 指導者、任せる範囲、相談先 | 学習目標、教材、練習・確認の時間 |
後半二行は育成を設計するための提案です。研修を受けたという事実だけで、実務を一人で担当できると判定しないようにします。
それぞれで学びやすいことを分ける
OJTでは、手順が業務のどの目的につながるか、例外時に誰へ相談するかなどを、実際の仕事と結び付けて説明できます。ただし、その期間に発生しない作業は経験する機会がありません。指導者の忙しさや、担当案件の範囲も考慮して計画します。
Off-JTでは、通常の仕事では試しにくい操作や例外を、演習用の環境で扱う設計ができます。一方、練習問題を解けることと、実案件の制約の中で進められることは分けて確認します。
この違いを踏まえると、「研修か現場か」の一方を選ぶより、同じ学習目標に対して役割を分担する方法が考えられます。厚生労働省の日本版デュアルシステムも、OJTと関連するOff-JTを組み合わせ、能力評価を行う考え方を示しています。厚生労働省「日本版デュアルシステム」
仮例:SQLの集計を担当する前に組み合わせる
以下は、エンジニア育成の説明用に作った例です。実際の社内研修や顧客の育成実績ではなく、期間や到達を保証するものでもありません。
| 学びたい内容 | 割り当てる方法の例 | 確認する問い |
|---|---|---|
| 絞り込みと集計の基本 | Off-JTで教材を読む・演習する | どの行が対象になるか説明できるか |
| 結合時の件数変化 | Off-JTで小さな架空データを使う | 件数が増える理由を追えるか |
| 実案件の集計目的 | OJTで仕様を担当者と読む | どの業務判断に使う数値か分かるか |
| 結果の確認と報告 | OJTで許可された範囲を指導下で扱う | 期待と違う結果を根拠付きで相談できるか |
先に基礎の演習を行っても、実案件で不明な条件が出れば、学習へ戻って構いません。逆にOJTで見つかった理解不足を、次のOff-JTの課題にすることもできます。
実データや本番環境を使う必要性は別に判断します。育成目的だからといって、本番操作の権限を広げる前提にはしません。検証用の材料で確認できる点は、そこで練習します。
OJTを仕事の丸投げにしないための準備
「先輩と同じ仕事をする」だけでは、何を学べばよいかが曖昧です。始める前に、次の三点を学習者と指導者で共有することを勧めます。
- 今回説明できるようになってほしいこと。
- 自分で進めてよい範囲と、止めて相談する条件。
- 結果を見ながら振り返る時間と確認者。
SQLの仮例なら、「集計できた」だけではなく、対象期間、除外条件、結果の照合方法を説明できるかを見ます。分からない点を適切に相談することも、業務の進め方として確認します。
指導者の不在時に相談先がないなら、担当作業を広げる前に支援方法を決めてください。研修項目を増やすことで、指導の不足が自動的に解消するわけではありません。
方式より、次に確認する学習内容を決める
知識が不足しているのか、演習経験が不足しているのか、実務の条件を読み取る部分に支援が必要なのかを分けると、次の教育方法を選べます。「OJTを増やす」とだけ書かず、学ぶ内容と確認方法までつなげましょう。
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