ネットワーク構成図は、何がどこにつながり、どの経路で通信するかを共有するための図です。書き始めるときは、配線を見る物理構成図と、ネットワークの分かれ方や通信を見る論理構成図を分けると、情報を整理しやすくなります。
この記事では、小規模な拠点を説明用に設定し、情報の集め方から描き分け、未確認箇所と更新日の残し方まで紹介します。図はすべて架空で、実際の当社・顧客の構成ではありません。
1. 図で答えたい問いと、描く範囲を決める
配線の接続先を調べたいのか、部署間の通信経路を確認したいのかで、図に載せる情報は変わります。最初に用途を一文にし、対象の拠点や機器、外部との境界を決めましょう。
Ciscoは、物理トポロジーを配線などの実際の接続、論理トポロジーを機器間のデータの流れとして説明しています。機器が同じケーブルでつながっていることと、同じネットワークに属することを区別するために、この二つの見方が役立ちます。Ciscoのネットワークトポロジー解説
| 図の用途 | 主に描く内容 |
|---|---|
| ケーブルの接続先を確かめる | 機器ID、設置場所、ポート、配線 |
| セグメントの分かれ方を確かめる | VLAN、サブネット、境界の機器 |
| 通信経路を確かめる | 送信元・宛先、経由先、必要な通信の向き |
| 運用を引き継ぐ | 上記の図と、確認日・参照資料・未確認箇所 |
全体図に全端末や全ポートを詰め込む必要はありません。全体図から詳細図を参照できるよう、同じ機器には同じIDを使います。特定の配線作業に使うなら、その部分の接続口まで分かる詳細図を用意します。
2. 機器・接続・設定を、確認方法と一緒に集める
既存の図、機器一覧、設定情報、管理画面、現物確認などを照合します。既存の図が新しいとは限らないため、そのまま写す前に確認日と変更履歴を見ます。
物理図の準備では、設置場所、機器ID、接続口、ケーブルの行き先を整理します。論理図の準備では、VLANやサブネット、通信を中継・制御する機器を確認します。NTT東日本の解説も、物理図には配置や配線、接続口などを、論理図にはVLANやIPアドレスなどを分けて載せる考え方を示しています。NTT東日本の構成図作成のポイント
確認用のメモには、次のように「情報」と「根拠」を並べます。
| 情報 | 確認した内容の例 | 根拠の例 |
|---|---|---|
| 物理接続 | SW-01のp24とFW-01のLAN側が接続 | 現物とポート表示を確認した日 |
| 論理設定 | 該当接続でVLAN 10と20を扱う | 設定を読み取った日時と参照先 |
| 未確認 | 予備配線の接続先が不明 | 現地での追加確認を担当者へ依頼 |
これは記録の仮例です。稼働機器の設定を取得する際は、組織の許可と既存の手順に従います。構成図を作るために、本番の配線や設定を試しに変える必要はありません。
3. 物理構成図は、線の両端を読めるようにする
以下は一台のファイアウォール兼ルーター「FW-01」と、スイッチ「SW-01」、二台の端末を想定した物理接続の例です。線は有線の接続を表し、FW-01のWAN側の先は今回の詳細対象外とします。
[上位回線:詳細は対象外]
|
WAN [FW-01]
LAN
|
p24
[SW-01]
p1 p2
| |
[PC-A] [PC-B]
図中のp1、p2、p24は説明用のポート名です。実図では、実機の表記に合わせて線の両端へ接続口を書きます。設置場所やケーブル種別を図へ詰め込みすぎる場合は、同じ機器ID・ポートを使った接続表を併記できます。
機器を絵だけで見分けさせないことも大切です。アイコンの形にかかわらず、IDと役割を付ければ、詳細図や機器一覧を行き来できます。予備線を描く場合は、使用中の線と同じ見た目にしないよう、凡例で区別します。
この物理図だけでは、PC-AとPC-Bが同じ論理ネットワークにいるかは分かりません。それは次の図と設定情報で示します。
4. 論理構成図は、同じ機器を別の見方で描く
同じ架空構成について、PC-Aは社内用VLAN 10、PC-Bは来訪者用VLAN 20に属し、FW-01が両方のゲートウェイを担うものとします。VLANは、スイッチ上で論理的にネットワークを分けるための仕組みです。
以下の線は論理的な接続関係を表します。すべての通信が許可されている、という意味ではありません。
[社内用:VLAN 10]
PC-A
|
[FW-01] ── [外部回線]
|
PC-B
[来訪者用:VLAN 20]
物理図にあったSW-01は、この簡略論理図では省略しています。両方の図を照合できるよう、説明用の対応表を添えます。
| 物理図の場所 | 論理上の役割 |
|---|---|
| SW-01 p1 | PC-AをVLAN 10へ接続 |
| SW-01 p2 | PC-BをVLAN 20へ接続 |
| SW-01 p24とFW-01 LAN間 | VLAN 10・20を運ぶ接続 |
| FW-01 | 各VLANのゲートウェイと通信制御 |
実図では、必要な範囲でサブネットやゲートウェイのIPアドレスを追記します。この例は描き分けの説明が目的のため、IPアドレスや設定コマンドを省略しています。そのまま機器へ設定するための設計書ではありません。
通信制御も説明したい場合は、線を増やすだけでなく、別の通信表を付けます。たとえば「来訪者用から社内用への通信は許可しない」という方針があるなら、方針、設定確認、実際の疎通確認を分けて記録します。VLANを分けた図があるだけで、その方針どおりに遮断されているとは判定しません。
5. 凡例と注記で、線の意味と確かさをそろえる
一枚の図の中で、物理接続、通信の向き、未確認の想定を同じ線で描くと、読み手が誤解しやすくなります。図の端へ短い凡例を置き、線と枠の意味を説明します。
たとえば、物理図では「実線=確認済みの配線」「破線=接続先が未確認」、論理図では「枠=セグメント」「矢印=指定した通信の開始方向」と決める方法があります。これは作図ルールの例であり、共通規格ではありません。図同士で意味を変える場合は、その図の凡例を明示します。
不明な機器や接続を、空白で消さず「接続先未確認」「設定未照合」と表示します。担当と確認予定は図の注記または課題一覧へ置き、確認できたら更新します。
共有先に応じて載せる情報も調整してください。運用者用の詳細図と外部説明用の概略図を分ける場合は、両方の版と参照関係を残します。認証情報を図へ埋め込まず、機器名やIPアドレスなどの取り扱いは社内の共有範囲に合わせます。
6. 更新日だけでなく、何を確認した日かを残す
作図ソフトで保存した日は、現物や設定を確認した日と同じとは限りません。「図の編集日」と「構成の確認日」を区別し、確認できた範囲を書きます。
たとえば「物理接続は10月1日に現地確認、VLAN設定は10月3日の取得情報で照合、上位回線は対象外」と残せば、次の担当者が情報の鮮度と限界を判断できます。これは日付の記入例です。
機器の追加や設定変更を終えた際には、対応する物理図・論理図・接続表のどれを更新するかを確認します。過去版を残し、変更した機器や接続が分かる短い履歴を付けましょう。
最後に、別の担当者が図を見て「この端末はどこにつながるか」「この線は何を表すか」「未確認なのはどこか」を説明できるか確かめます。まず一つの拠点から、実際の確認に使える図を整えてください。運用へ渡す資料全体の整理は開発から運用への引き継ぎ、相談先はインフラ・クラウド技術支援をご確認ください。