IT資産管理台帳は、機器の一覧を作った時点では完成しません。貸与、返却、移動、修理のたびに情報を更新し、台帳と現物の食い違いを確認する運用まで決めておく必要があります。
この記事では、PCなどの機器を管理する担当者に向け、台帳の項目と更新手順を紹介します。一台を識別する情報、現在の状態、変更の記録を分けることを軸に、表計算ソフトでも検討できる例で説明します。
一台を識別する番号を、利用者や端末名から分ける
最初に、台帳の一行が何を指すのかを決めます。機器台帳なら一台を一行とし、社内の管理IDを付けて、現物のラベルや製造番号へ対応させる方法があります。利用者が変わったときに別の機器として登録し直さないためです。
端末名、利用者名、設置場所を管理IDの代わりにすると、それらが変更された際に過去の記録をたどりにくくなります。管理IDとは別欄に持ち、同じIDを別の現物へ再利用しない運用を検討してください。
IBMは、IT資産を追跡する情報として、費用や契約に加えて物理資産の場所と状態を挙げています。以下の項目は、その考え方を日常の機器管理へ落とし込んだ編集上の例です。IBMのIT資産管理プロセス
台帳には「今の状態」と「いつ確認したか」を残す
すべての情報を必須欄にすると、更新できない欄が増えます。まずは自分たちの貸与・返却確認に必要な項目に絞り、契約や技術情報は別の管理先へ参照できる形を考えましょう。
| 項目群 | 項目の例 | 記入時の注意 |
|---|---|---|
| 識別 | 管理ID、機器種別、メーカー製造番号 | 分からない番号を推測で埋めない |
| 現在の利用 | 利用状態、利用者または利用部署 | 共用機や保管品には適切な区分を設ける |
| 所在 | 拠点、保管場所、貸与先 | 在宅貸与なども社内の記録粒度を決める |
| 取得・契約参照 | 購入・リース等の区分、契約の参照先 | 契約書の全文を台帳へ複製しない |
| 確認 | 最終現物確認日、確認者、確認方法 | 自動収集日時と現物確認日を混同しない |
| 保留事項 | 差異、確認担当、次の確認期限 | 空欄のまま正常と扱わない |
状態は「貸与中」「保管中」「修理中」「廃棄済み」など、使う区分とその意味を決めます。返却を受けただけで次の人へ貸せるとは限らないため、必要なら「返却・確認待ち」と「貸与可能な予備」を分けます。
利用者情報を含む台帳は、必要な担当者が必要な範囲を扱えるよう、閲覧・編集権限も決めてください。パスワードや秘密鍵を備考欄へ記入する運用にはしません。
更新は、貸与や返却の作業へ組み込む
定期棚卸しまで変更をためず、機器が動く場面ごとに更新担当と完了条件を置きます。次の表は分担の例であり、組織の実際の受け渡し方法に合わせて調整します。
| 変化 | 情報を確認する人の例 | 更新する内容と確認 |
|---|---|---|
| 機器を受領した | 受領担当 | 管理IDと現物を対応させ、取得状態を登録 |
| 貸与した | 貸与担当と受領者 | 利用者、所在、貸与日を確認 |
| 部署・利用者が変わった | 部門担当 | 引き渡す側と受け取る側を照合 |
| 返却された | 返却を受けた担当 | 現物ID、返却日、確認待ちの状態を記録 |
| 修理へ出した・戻った | 修理手配担当 | 持出先、状態、返却後の同一性を確認 |
| 廃棄した | 廃棄管理担当 | 処理を確認できる記録へ紐付け、現役一覧から区別 |
変更日と入力日は異なることがあります。後日入力したなら、変更が起きた日と、いつ誰が入力したかの両方を記録できるようにします。単にファイルの更新日時を見る方法では、一台ごとの変更経緯を説明できません。
仮例:返却されたPCを、そのまま「予備」にしない
管理ID「PC-014」が営業部の担当者から返却されたとします。以下は説明用の仮例で、当社の運用実績ではありません。
- 受領担当が現物の管理IDと製造番号を確認する。
- 台帳を「貸与中」から「返却・確認待ち」に変え、返却日と保管先を残す。
- 再貸与に必要な社内確認が終わったら「貸与可能な予備」に変える。
- 次の利用者へ渡したとき、同じ管理IDで新しい貸与を記録する。
現在の利用者欄を上書きしても、変更履歴には前の貸与と返却を残します。表計算ソフトなら、現在一覧とは別の履歴シートに「管理ID、変更日、変更内容、担当、根拠の参照先」を記録する方法があります。
返却依頼のメールがあるだけなら、返却済みとはしません。発送された、受領した、再貸与できる、といった段階を区別すると、どの確認が残っているかが明確になります。
棚卸しは、台帳から現物・現物から台帳の両方を見る
台帳に書かれた機器を探すだけでは、台帳にない機器を見落とします。対象範囲を決めたうえで、双方向に確認しましょう。CIS Control 1も、資産を一覧化するだけでなく、追跡と修正を続けることを示しています。以下はそのための実務手順の提案です。CIS Control 1
まず台帳側から、管理IDごとに現物・利用者・所在・状態を照合します。次に、対象の執務場所、保管庫、貸与先などで確認した現物が、台帳のどの行に対応するかを見ます。確認範囲に含められなかった拠点や休職者への貸与品は、確認済みの件数へ混ぜません。
差異は、少なくとも次のように分けると次の行動を決めやすくなります。
- 台帳にあるが現物未確認:利用者や移動記録へ照会する。直ちに紛失と断定しない。
- 現物があるが台帳にない:所有・調達経路を確認し、登録または対象外の理由を残す。
- 利用者や所在が違う:引き渡しの事実を確認して修正する。
- 同じ現物が複数行にある:識別情報と履歴を確認し、統合した記録を残す。
自動収集で最近の接続が見えても、机や保管庫での現物確認と同じ証拠にはしません。それぞれの確認方法と日付を残し、所在確認にどこまで使えるかを決めます。
修正を終える条件を決めて、次の更新へ戻す
棚卸しの完了は、差異を消して全件を一致に見せることではありません。確認済みの対象と、未解消の差異、その担当と次の期限を分けて報告します。差異を修正したら、何を根拠に変えたかを残します。
頻度は、機器の移動の多さや重要性、担当できる体制に合わせて決めます。台帳の誤りが繰り返されるなら、棚卸し回数だけを増やす前に、貸与・返却時のどこで情報が止まるかを調べましょう。
まず、直近の貸与または返却一件を、台帳と受け渡し記録でたどってみてください。別の担当者が同じ作業を続けるための書き方は、運用手順書の作り方も参考になります。