KPTは、Keep(続けたいこと)、Problem(問題だったこと)、Try(次に試すこと)の三つで活動を振り返る枠組みです。IPAのワークショップ資料でも、この順に振り返る方法として紹介されています。IPA:KPTの参考説明(資料30ページ)
チームで使うなら、三つの欄を埋めた後に「誰が、どの場面で何を試し、次回何を確かめるか」まで決めてみましょう。この記事では、開発やインフラ運用の振り返りで使える進め方と、Tryを選ぶ判断表を提案します。以下の記入例は説明用で、特定企業の実績ではありません。
KPTの三つの欄には何を書く?
| 欄 | 書く内容 | 開発チームでの記入例 |
|---|---|---|
| Keep | 続けたい行動と、役立った場面 | レビュー依頼に確認してほしい点を添えたら、最初に見る箇所を共有できた |
| Problem | 困った出来事と、その影響 | レビュー依頼の期限が分からず、着手順を判断できなかった |
| Try | 次に試す具体的な行動 | 依頼文に希望期限と、その理由を記入して試す |
Keepは「良かった」で終わらず、次にも再現したい行動を残す欄として使いましょう。Problemには人物の評価ではなく、起きた場面と困った内容を書きます。TryはProblemへの対策だけでなく、Keepを別の作業でも試す案にしても構いません。
スクラムガイドでは、スプリントレトロスペクティブの目的を、品質と有効性を高める方法を計画することとしています。KPTを使う際も、次の行動まで話し合うという観点を参考にできます。Scrum Guide:Sprint Retrospective
KPTの進め方:対象をそろえてからTryを選ぶ
以下は本記事の進行案です。時間や件数を固定のルールとせず、チームの規模と対象業務に合わせて調整してください。
1. 振り返る期間・業務・前回のTryを確認する
「直近の開発期間」「今回の運用引き継ぎ」など、対象を最初にそろえます。前回のTryがある場合は、実行したか、何が分かったか、まだ分からないことは何かを先に確認します。
未実施のTryをそのまま積み増す前に、着手できなかった理由を確かめましょう。時間が足りなかったのか、対象の作業が発生しなかったのかで、次の扱いを変えます。
2. KeepとProblemを各自で書き出す
最初に各自で書く時間を取り、一つの項目には一つの出来事を書きます。「連携が悪い」だけなら、進行役が「どの受け渡しで、何の情報が足りなかったか」を聞いて具体化します。
事実と原因の推測も分けます。例えば「依頼後、希望日までにレビューされなかった」が確認できた出来事なら、「担当者が忙しかった」は本人や記録で確認するまで仮説として扱います。
3. 似た項目をまとめ、扱う論点を選ぶ
同じ受け渡しや作業に関する項目をまとめます。ただし、似た表現でも状況が違う場合は分けて残してください。発言の数だけで決めず、業務への影響と、自分たちが変更できる範囲を確認します。
4. Try候補から、今回試す行動を決める
最初は一つのTryから始める案もあります。次回までに実行し、結果を持ち寄れる大きさに絞ってください。採用しなかった案は削除せず、保留理由と見直す条件を記録します。
Tryを選ぶ判断表
Tryは、実行する場面と確認方法を説明できるかで選んでみましょう。次の表は、候補を実行・調査・相談に分けるための判断案です。
| 候補の状態 | 今回の扱い | 書き換え例 |
|---|---|---|
| チームで変更でき、次回までに試せる | 小さく実行する | 次のレビュー依頼で希望期限の欄を使う |
| 困った出来事は明確だが、原因が不明 | 調べる行動をTryにする | 次の依頼について受付・着手時点を記録し、どこで待ったか確認する |
| 他部署の承認や調整が必要 | 相談先と確認事項を決める | 窓口担当が依頼の受付条件を相手部署に確認する |
| 「意識する」「徹底する」だけ | 場面と動作を具体化する | 引き継ぎ時に未完了項目と次の担当を読み合わせる |
| 次回までに対象作業が発生しない | 試す機会を指定して保留する | 次回リリース時に試し、その後の振り返りで確認する |
「レビューを早くする」は目指す状態です。Tryとして記録する際は、「依頼者が希望期限と理由を記入する」のように動作へ落とし込みます。速くなるかどうかは実施後に確かめ、効果を先に決めつけないようにしましょう。
そのまま使えるKPT・Tryの記入例
以下は、運用引き継ぎを題材にした架空の例です。担当者名や確認日は、実際の会議で決めた値に置き換えてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象 | 今回の当番交代時の引き継ぎ |
| Keep | 未完了の問い合わせを一覧で共有できた |
| Problem | 一部の問い合わせで、次に誰が返信するか決まっていなかった |
| Try | 未完了項目ごとに次の対応担当を記入し、交代時に読み合わせる |
| 実施する人 | 引き継ぎ元と引き継ぎ先の当番担当者 |
| 記録を持ち寄る人 | 今回決めた振り返り担当者 |
| 試す時点 | 次の当番交代時 |
| 確認する時点 | 次回の振り返り。開催日も併記する |
| 確認材料 | 担当欄の記入状況、担当不明で確認し直した項目、読み合わせの負担 |
担当者は、その人だけが改善責任を負う意味ではなく、実施や記録の持ち寄りを確認する役割として決めます。実行に他のメンバーの協力が要る場合は、その分担も残してください。
次回は「実施した」と「役立った」を分けて判断する
次の振り返りでは、Tryを完了扱いにする前に、実施の有無と結果を分けて確認します。
| 観測できた状態 | 次に決めること |
|---|---|
| 実施し、続けたい点が確認できた | Keepとして残し、適用する場面を決める |
| 実施したが、負担や別の問題が出た | 手順を小さくするか、別案に変えるかを話し合う |
| 実施したが、効果を判断する材料が足りない | 確認する材料と見直す時点を決める |
| 実施できなかった | 理由を確認し、縮小・延期・取り下げを決める |
例えば引き継ぎの記入欄を追加できても、それだけで担当不明の問題が解消したとは判断しません。確認し直した場面があったか、読み合わせが負担になっていないかも持ち寄ります。
同じProblemが残る場合は、同じTryを繰り返す前に、対象の出来事と原因の仮説を見直してください。障害後に時系列や原因仮説を詳しく整理したい場合は、障害の振り返り方を参照できます。
KPTの会議を終える際は、今回のTry、実施する人、試す時点、次回の確認材料を読み合わせましょう。その記録を次の振り返りの最初に開くところまで予定に入れれば、継続・変更・取り下げの判断に戻れます。