システム開発の工程は、企画から要件定義、設計、実装、テスト、移行、運用へと仕事を整理するための区切りです。工程名を覚えるだけでなく、何を材料にして、何を決め、誰が次の段階へ渡すかを確認すると、自分が参加すべき場面を見つけやすくなります。
この記事では、開発に初めて関わる企業担当者とエンジニア向けに、各工程の役割を一つの地図にまとめます。工程名、成果物の名称、確認者はプロジェクトに合わせて調整してください。
開発工程の全体像を成果物でつかむ
IPAの共通フレームは、構想から開発、運用、保守、廃棄までの作業と役割を整理する枠組みです。IPAは、掲載する工程と作業の対応例を唯一の推奨体系とはしていません。IPA「共通フレーム2013」
以下はその規格表ではなく、業務システムを段階ごとに説明するための整理例です。「確認担当」は承認権限の指定ではなく、内容を確かめる役割の候補を示します。
| 工程 | 入力する材料 | 決めること・成果物の例 | 確認に参加する人 |
|---|---|---|---|
| 企画 | 業務上の課題、制約 | 目的、対象範囲、実施する理由 | 業務責任者、企画担当 |
| 要件定義 | 現行業務、利用者の要望 | 必要な機能、品質、対象外の条件 | 業務担当、開発担当、運用担当 |
| 基本設計・方式設計 | 合意した要件 | 画面、データ、連携、構成の仕様 | 開発担当、該当する業務・運用担当 |
| 詳細設計・実装 | 仕様と設計上の制約 | 処理の設計、プログラム、設定 | 実装担当、レビュー担当 |
| テスト・受入 | 要件、設計、確認条件 | テスト結果、修正記録、受入判断 | 開発・テスト担当、利用部門 |
| 移行・利用開始 | 確認済みシステム、移行計画 | データ移行結果、切替結果、運用開始の判断 | 移行担当、業務責任者、運用担当 |
| 運用・保守 | 稼働中の構成、手順、問い合わせ | 日常の確認、障害対応、変更記録 | 運用担当、開発担当、業務担当 |
資料を作る人と、業務として使えるかを判断する人は同じとは限りません。例えば開発担当が画面案を作っても、必要な情報が表示されるかは利用部門の確認が必要です。
要件定義と設計では、答える問いが変わる
要件定義では「どんな業務を成立させたいか」を整理し、設計では「それをどう実現するか」を具体化します。IPAも、利用者の要求を分析して関係者と合意する段階と、機能・構成・外部との接続を具体化する段階を分けて説明しています。IPA「要件定義とは」
説明用に、社内の備品貸出を扱うシステムを考えます。「二重予約を防ぎたい」は要望です。そこから、同じ備品の利用期間が重なるときの扱いや、予約を変更できる人を決めます。その条件を満たす画面、データの持ち方、処理を考えるのが設計の仕事です。
画面の見た目だけを先に確定すると、取消しや例外の扱いが残ることがあります。打ち合わせでは、今決めているのが業務上の条件か、実現方法かを確認し、未決事項を分けておきましょう。
テストは、作り終わった後だけの話ではない
テストを実行できる時点と、何を確かめるかを考える時点は別です。要件を決める際に「どの状態なら満たしたと判断できるか」を書いておくと、設計や実装の後に確認の基準を作り直さずに済みます。
備品貸出の例なら、通常の予約だけでなく、同じ時間帯の重複や取消しを確認対象の候補にします。細かなテスト項目は担当者が設計しますが、業務部門は実際に困る場面を伝えます。
利用部門が行う確認の具体化は、受入テストの準備で扱っています。工程表に「受入」と書くだけでなく、確認する人が使える時間と材料を確保してください。
工程の受け渡しで残す三つのこと
次の工程へ進む際は、完成した資料に加え、未決事項と変更の連絡先を添えることを勧めます。以下は引き渡しメモの例です。
- 確定した範囲:対象の資料名・版と、今回決めた条件
- 残る事項:未決の理由、影響する機能、確認する担当
- 変更時の扱い:どの担当へ知らせ、どの成果物を見直すか
「設計完了」と報告されても、一部の外部連携だけ相手側の回答待ちなら、その部分まで確定したとは扱いません。一方、影響しない範囲まで必ず止める必要があるとも限りません。進められる部分と保留する部分を分けて判断します。
反復して作る場合も、確認すべき内容は残る
小さな機能を作って確かめる進め方では、表の工程が短い単位で繰り返されることがあります。この表は、一度終えた工程に戻れないという意味ではありません。
要求が変わったら、変更した文言だけでなく、設計、テスト、運用への影響も確認します。また、プログラムが完成した時点と、利用開始できる時点は区別しましょう。運用担当への資料・権限の受け渡しは、開発から運用への引き継ぎも参考になります。
まず、自分たちの工程表に「成果物」と「確認担当」の二列を加えてみてください。空欄があれば、作業が始まる前に関係者と補えます。開発体制についての相談先を探している方は、テクノヴァースのSES事業をご覧ください。