AIレコメンドは、利用者と商品・記事・教材などの組み合わせを評価し、関心や目的に合う候補を提示する仕組みです。何がどれだけ売れるかを予測する需要予測とは、予測したい対象が異なります。
導入時は、誰に何を薦め、どの行動を助けたいのかを先に決めます。クリックされるものを並べることが、必ず業務の目的に合うとは限りません。
内容ベースと協調フィルタリング
内容ベースの方式は、項目の特徴と、利用者の好みや行動を照らし合わせます。例えばネットワークの基礎を学んだ人へ、同じ分野の教材を候補にする考え方です。Google: Content-based filtering
協調フィルタリングは、利用者や項目への反応の類似性を使います。自分と似た反応を示す人が選んだ項目を薦めるなど、項目の内容だけでは得られない候補を出す方法があります。Google: Collaborative filtering
| 方式 | 手掛かりの例 | 最初に確認するデータ |
|---|---|---|
| 内容ベース | 分野、難易度、説明文など | 項目の特徴と、利用者の関心 |
| 協調フィルタリング | 利用、評価、選択などの似た傾向 | 利用者と項目の組み合わせの履歴 |
| ルールによる提示 | 必須教材、公開日などの条件 | 業務上のルールと対象範囲 |
実際には組み合わせることもできます。履歴が少ない段階から、複雑な学習モデルだけを前提にする必要はありません。
候補生成、採点、再順位付けを分ける
Googleの教材では、多数の項目から候補を作り、点数を付け、追加条件で再順位付けする構成が紹介されています。Google: Recommendation systems overview
架空の社内学習サイトなら、まず学習分野から教材を絞り、次に関心や難易度との適合を評価し、最後に公開終了した教材や閲覧権限のない教材を除く、といった設計が考えられます。
何を候補にできるかと、その中で何を上に出すかを分けると、不具合も調べやすくなります。必要な教材が最初の候補に入っていなければ、順位だけを調整しても表示されません。
履歴がない場合の提示を用意する
新しい利用者や、新しく追加した教材には、十分な行動履歴がありません。その場合の動作を別に決めておきます。例えば利用者が選んだ学習分野、教材の説明、編集側で定めた入門教材を使う方法が考えられます。
履歴がないことを「関心がない」と同じ扱いにしないことがポイントです。また、見せていない教材は選ばれにくいため、利用履歴をそのまま全項目への好みと考えないようにします。
評価では、既存利用者だけでなく、初回利用者、新着教材、閲覧履歴の少ない分野を分けて結果を確認してください。
似たものだけを薦めていないかを見る
似た項目ばかり並ぶと、新しい分野を知る機会が少なくなる場合があります。Googleも、候補や再順位付けを工夫して多様性を考慮する方法を説明しています。Google: Re-ranking
学習サイトの仮例では、同じ難易度の教材だけでなく、前提知識を補う教材や次の段階の教材を提示する枠を設けることが考えられます。ただし、多様性を増やすこと自体を目的にせず、利用者が何を学びたいかに照らして評価します。
クリック以外に何を測るか決める
社内学習を助ける目的なら、クリック数だけでなく、教材を見終えたか、必要な知識へ到達できたか、役立たない推薦を避けられたかなどを検討します。指標は目的に合わせ、実際に観測できるものを選びます。
導入前は過去データで候補の妥当性を調べ、導入後は利用者の反応と不都合を確認します。行動履歴の収集範囲や利用目的、見直す責任者も整理してください。複数のAI利用を管理する体制については、AIガバナンスの解説も参考になります。