AIによるデータ分析では、質問の言い換え、集計方法の案、コード作成、グラフの説明などを補助させられます。ただし、表を渡して「分析して」と依頼するだけでは、業務上の定義や除外条件まで正しく伝わりません。
何を判断するための分析かを決め、集計条件と計算結果を人が確認できる形にすることが重要です。この記事では、特定の製品操作ではなく、仮の問い合わせデータを使った手順を示します。
分析の問いを、一つの比較にする
「問い合わせの状況を知りたい」では広すぎます。「4月と5月で、製品Aの問い合わせ1件当たりの平均対応時間がどう変わったか」まで具体化すると、必要な列と集計条件が決まります。
対象を完了済みの問い合わせにするなら、未完了は除外し、その件数は別に示します。受付日で月を分けるか、完了日で分けるかも先に決めます。両者を混ぜると同じデータでも結果が変わります。
分析前に、入力してよいデータか、利用環境の保存・学習利用・権限設定が社内の条件を満たすか確認します。氏名や自由記述が不要なら除き、今回必要な集計項目だけを使います。
小さい仮データで期待値を作る
以下は説明のために作った4行です。月は受付月、対応分は実作業時間とします。待ち時間を含む解決までの経過時間とは別の指標です。
| ID | 受付月 | 製品 | 状態 | 対応分 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 4月 | A | 完了 | 20 |
| 2 | 4月 | A | 完了 | 40 |
| 3 | 5月 | A | 完了 | 30 |
| 4 | 5月 | A | 未完了 | 10 |
この条件で4月の平均は(20+40)÷2=30分、5月は30÷1=30分です。未完了のID4を混ぜると5月は20分になりますが、定義に反します。先に期待値を用意しておくと、生成された処理が条件を守っているか確認できます。
AIには結果だけでなく、処理内容を求める
依頼文は、たとえば次のようにします。
受付月別に、製品Aかつ完了済みの問い合わせの平均対応分を集計してください。月、対象件数、対応分合計、平均を出してください。未完了件数は別に示し、欠損値を0へ置き換えないでください。実行できる環境なら処理コードと実行結果を、実行できない場合は未実行のコード案と明記してください。分析結果から原因は断定しないでください。
実行結果とコード案を混同しないことが大切です。生成されたコードを実行する場合は、読み込むファイル、外部通信、書込み先を確認し、元データを保持した検証環境で扱います。
Pythonの標準機能だけで仮データを集計するなら、次のような処理になります。
rows = [
("4月", "A", "完了", 20),
("4月", "A", "完了", 40),
("5月", "A", "完了", 30),
("5月", "A", "未完了", 10),
]
for month in ("4月", "5月"):
values = [minutes for m, product, status, minutes in rows
if m == month and product == "A" and status == "完了"]
print(month, len(values), sum(values), sum(values) / len(values))
出力は4月が「2件・60分・平均30.0分」、5月が「1件・30分・平均30.0分」です。この例は各月に対象がある前提です。実データでは対象0件、欠損、数値でない値をどう扱うかを追加で決めます。
検算してから、違いの説明を考える
まず件数と合計を元表へ戻って確かめ、次に平均や割合を確認します。全体の平均を求めるときは、月別平均を単純に平均するのではなく、全対象の合計と件数から計算します。件数が違う月を同じ重みで扱わないためです。
AIが「改善した原因は研修」と説明しても、表に研修の情報はありません。担当者構成、問い合わせ難度、未完了の残り方など、別の要因も考えられます。「違いがある」という観察と「なぜ違うか」という仮説を分けて記録します。
自動分析も探索対象や計算方法に制約があります。たとえばPower BIの分布差分を探す機能は、モデル内の列にフィルターを適用して違いを探し、時間内にすべての列が調べられるとは限らないと説明しています。Microsoftの自動インサイトの説明
再計算できる状態で共有する
共有資料には、問い、対象期間、除外条件、元データの版、処理内容、結果、残る不確実性を添えます。読みやすい説明文だけでは、データを更新した際に同じ計算を再現できません。
最初は小さな表で条件と期待値を合わせ、その後に実データへ広げると、誤りが集計条件によるものか入力によるものかを見分けやすくなります。業務への適用を検討している方は、テクノヴァースのAI活用支援をご確認ください。